丹色
型通りの挨拶を投げ
カバンを背負って外に出る
イヤホンから流れてきたのは懐かしい映画の主題歌だ
君のためなら死んでもいい
「そんなわけあるか」
と影差す足元につぶやく
結局みんな他人事だ
ニュースサイトのトップを飾る
不正も不倫もなにもかも
私には関係ないものだ
だって私はどこも痛くないんだから
(誰でもいいから私のために死んでみせてよ)
柄でもない言葉が脳裏に浮かぶ
それもこれも昼の叱責のせいだ
何もかも全部そのせいにしてしまおう
ゾンビのいない世界で
私は丹色の陽を背に
ただ静かにバスを待つ