こまめしるこのくらし

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獄門島

天気が良かったのでBOOKOFFに行ったらいい出会いをしてしまいました。

 

 

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門島

 

『獄門島』/  横溝正史

 

実は『百日紅の下にて』がきっかけで、この話が気になっていました。

ただ、大きい本屋に行くと海外ミステリーばっかりを見てしまって忘れていました。

そんな日にたまたま出会ったのです。

 

私が触れたことのある作品は媒体もバラバラですが、

先述した『百日紅の下にて』

一番有名な『犬神家の一族

そしてドラマで見た『悪魔の手毬唄

タイトルから好きな『悪魔が来りて笛を吹く

短編『車井戸はなぜ軋る』

計5作品です。

 

『本陣殺人事件』は学校の図書館で人気すぎて、

借りられないまま卒業してしまったので未読です。

(はやくよみたい…)

 

さて、横溝作品といえば皆さんどういうイメージでしょうか。

名前の読みにくい多すぎる登場人物?

入り乱れたドロドロな人間関係?

不気味で排他的な村?

圧倒的な権力を持った故人?

グロテスクな殺害方法?

美しいけど闇ありげな女性?

薄気味悪いお年寄り?

 

私もいろいろなイメージを持っています。

昔はひたすらに不気味なホラー小説だと思っていました。

横溝作品がテレビでドラマ化されるたびに親に、

チャンネルをはやく変えて

と泣きつくほどでした。

もちろん作品の不気味さは変わってはいませんが、

小説で読むと少し印象が変わりました。

横溝正史の情景描写が美しいということに気づいたのです。

 

門島へ向かう最中に船から獄門島を眺め、

島に重苦しい暗い雲がかかっていること。

少年に吹く風の優美さや

少女の周りで散る花の儚さ。

 

どれも凄惨な事件とは程遠く、

場面を想像するのに容易く美しい。

この対比が好きで、私は横溝正史の作品にはまってしまったようです。

映像作品では目に見えるただの情報を、

想像させるだけの表現がそこにはあります。

 

横溝正史の作品が不気味で苦手だ、という方は

映像作品でなく本で読んでみるというのもいいかもしれない。

 

そして今作ですが、

独特のグロテスクさや人間関係のややこしさといった

横溝作品特有の難しさをあまり感じませんでした。

初めて読む人にもおすすめです。

 

 

ここから下は少しネタバレになってしまうかもしれないので、

ご注意ください。

 

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 獄門島

 

名前からして不気味ですね。

これがミステリーと知らなくても、

この島には何かがあるとわかります。

 

私は推理するのは苦手ですが、

犯人探しは得意です。

ですので今回も犯人についてはなんとなく予想がついていました。

でも100点満点ではなかったです。

完璧にはあてられませんでした。

 

横溝正史のミステリーといえば

血で血を洗う遺産相続、

2人目あたりから判明する見立て殺人、

実は血がつながってました

というのが私が今まで読んだもののイメージ。

 

私自身アガサ・クリスティーが好きなこともあり

見立て殺人は大好きです。ロマンですね。

 

今作も見立て殺人ものです。

美しいけど不気味な妹たち、

彼女たちを守ってほしいと頼む兄。

そしてすべてが終わった後に判明する真実。

 

取り返しがつかなくなってから後悔する様は、

最近のサスペンスドラマにも多いですね。

 

個人的には三姉妹が好きでした。

明らかに年齢と似つかない言動、

きっとこの物語で彼女たちは殺されてしまう。

だからどこか憎めなくて愛らしい。

 

そして死に姿を表現する言葉たち。

梅に絡みつくニシキヘビ、

鐘から除く振袖、

萩の花。

 

物語に見立て殺人の題として登場する俳句の美しさ。

俳句が美しいからこそ凄惨な殺害現場も美しく見える。

「駒が勇めば花が散る」

「猫が踊れば鈴が鳴る」

歌詞のようなこの文字たちが、

その現場を物語っている。

あまりの美しさにため息をついてしまった。

 

ミステリーを読んでいるのに、

人が殺されているのに、

誰も救われないのに。

それでもなぜか心が安らぐ美しい言葉が多かった。

これからはもっと物語に現れる景色や心理描写、

文字だからこそ味わいがある個所についてもじっくりと読みたい。

そう感じた作品でした。 

 

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終。

 

門島 / 横溝正史

 

 

獄門島 (角川文庫)

獄門島 (角川文庫)